食に関する慣用句
1 朝飯前
朝ご飯を食べる前にできてしまうぐらい簡単なことという意味。
「先生はお話しがとてもお上手だから、結婚式のスピーチなんて朝飯前でしょう。」 A: ちょっと車の調子が悪いので、見てくれない? B: 車の修理は朝飯前だから、いつでも見てあげるよ。
2 雨後の筍
雨が降ったあと、地面から筍が次々に出てくるところから、ある事が起こった後、似たようなものが次々に現れること。
「ひとつマンションが建ったら、雨後の筍のように似たような建物がたくさんできた。」 「最近のブームを受けて、ラーメン屋が雨後の筍のようにいくつも現れた。」
3 絵に描いた餅
絵に描いた餅は見るだけで実際に食べることができないから、現実にはならないという意味。実現不可能な計画や、実際の役に立たないものを指す時に使う。
「どんなに立派な計画を立てても、実行出来なければ所詮は絵に描いた餅だ。」 「この計画が絵に描いた餅にならないように、みんなでがんばりましょう。」
4 足がはやい
腐りやすい食材のことを指す。主に生魚に使うことが多い。「足がおそい」という言い方はない。語源は諸説あるが、「足」を「動き」とか「変化」と捉え、「変化が早い」ことで悪くなりやすいという意味にしたという説と漁師が船のことを「足」と呼ぶので、そこから来たという説が一般的。
「サバやイワシなど青魚は足がはやいから、早く食べたほうがいいですよ。」 「足がはやい魚は酢でシメると、日持ちがよくなります。」
5 うまい汁・あまい汁を吸う
自分で苦労せず、人を利用して利益を得ることを指す。
役人は組織を利用して、あまい汁をすっている。」 「今回の事件では、店長だけがうまい汁をすって、アルバイトの店員は長時間働かされていた。」
6 脂が乗る
(主に)魚の身の脂が多くなり美味しくなっているという意味から、調子がよく、仕事などを積極的にしている人に対して使う。
元々の意味:「今の時期のイワシは脂が乗っていて、おいしいですよ。」 慣用句の意味:「山田さんは入社して三年目、いよいよ仕事に脂が乗ってきて、毎日が楽しそうですねえ。」
7 棚からぼたもち・棚ぼた
思いがけず幸運なことが起きたり、努力しないでいいものを得ること。棚から落ちてきたぼたもちが、たまたま開いていた口の中に入ったことに由来する。短く「たなぼた」という時もある。
A: テレビを探していたら、たまたま引っ越す人がいて、只でもらっちゃった。 B: まさに、棚からぼたもちだったね。 チケットが一枚あまっていたらしく、棚ぼたでパーティに行けることになった。
8 胡麻をする
他の人に気に入られるために、お世辞を言ったり、機嫌をとったりすること。媚びへつらうこと。胡麻をすり潰す時にすり鉢のまわりにくっつく様子から、人に媚びることに使われるようになった。
「あいつは上司に胡麻をすって出世したんだ。」 A: 先生の授業はいつもとても楽しいし、勉強になります。 B: 胡麻をすっても、成績は変わらないよ。
9 腹八分目
ご飯はお腹いっぱい食べるのではなく八分目(80%)ぐらいにしておくのが健康にいいという意味。
「いくらお腹が減っていても、腹八分目にしたほうが健康にいいですよ。」 A: よく食べるね。 B: うん、今日はお腹ペコペコなんだ。 A: でも、腹八分目にしたほうが健康にいいよ。
10 鯖をよむ
「よむ」は「数える」という意味で使われていて、「さばの数を数える」という意味。鯖は足が早い魚なので、数を数えるときに急がなければならなかった。そこから、数が正確ではない時に使われるようになり、さらに、「自分の利益になるように、数をごまかす」という意味になった。(サバやイワシは身の中に含まれる酵素が多く、悪くなるのが他の魚より早い。)
A: あの人、35歳だって。 B: ええっ!10歳ぐらいさばをよんでんじゃないの。 給料のことを聞かれた時に、鯖をよんで、少し多く言っちゃった。
11 手前味噌
自分のことや身内(家族・会社など)を謙遜しながら誉める時に使う。自分の家で作った味噌がいちばんおいしいということから、自分のことを褒めることの意味になった
「手前味噌ですが、家内の料理はとてもおいしいんですよ。」 「手前味噌ではありますが、今回の私のプロジェクトはなかなか好評です。」
12 大根役者
大根役者は演技が下手な役者のことを指す。大根は健康にいい食べ物で、食べてもあたることはない。「食べ物にあたる」は「悪いものを食べてお腹がいたくなる」という意味だが、これに対して、「役者があたる」は「演技が認められて、人気が出る」ことを意味している。この二つをかけて、下手であたらない役者を大根役者と呼ぶようになった。
「あの俳優はいつまでたっても大根役者だなあ。」
13 お茶を濁す
茶道をよく知らない人が、抹茶を茶碗に入れて適当にかき混ぜて作ってしまうことから、その場しのぎで適当にごまかしたり、表面的に取り繕ったり、物事をあいまいにしたりすることを指す。
「質問されたけど、うまく説明できなかったから、適当にお茶を濁しておいた。」 「この問題はまだ公にできないから、聞かれたらお茶を濁しておいてください。」
14 うなぎのぼり
うなぎが急流の川や水の少ない川でも川下から川上に上っていく様子から、物事がどんどん上がっていくことを指す。景気や経済の話をする時によく使われる。
「最近の好景気を受け、株価もうなぎのぼりである。」 「インフレのせいで物価がうなぎのぼりに上昇している。」 「新しくできた動物園はきれいで、人気もうなぎのぼりだ。」
15 猫舌
猫が熱いものを食べないことに由来して、熱い料理が出された時に、熱いものが苦手ですぐに食べられない人を指す。(どんな動物でも熱いものは食べないが、猫は古くからペットとして家の中で飼われていたので、熱いものを与えられる機会が多かったからだと考えられる。)
A: スープは冷めないうちにどうぞ。 B: すみません、私、猫舌なので、少し冷まさないと飲めないんです。 A: このラーメン、熱々でおいしいですよ! B: 私はもう少し待ってから食べます。猫舌なので。