穣さんはずっと畑仕事をしてきました。
数年前の四月、東京に住んでいる功が郡上を訪ねていた時の帰りがけに...
穣 「功、おまん、西瓜もっていかんか?」
功 「西瓜?ええよ、もらっていくよ。」
穣 「ほうか、じゃ、ちょっとまっとっとくれ。」
そう言うと、穣さんは畑のほうに行ってしまい、しばらく帰ってきません。
やっと帰ってきた穣さんの手には西瓜の苗が何本か握られていました。
それを見た功はあっけにとられて
功 「何や苗か。食べられる西瓜じゃないんか。」
すると穣さんは真顔で
穣「今頃そんなもんあるわけないやろ。」
父はここで改めて自分が季節感を失った都会生活にいかに慣れてしまっているのかに
気がつき大笑いをしたと話してくれました。
穣さんの素朴な人柄がよくでているエピソードだと思いました。